新電力のメリット・デメリット 変わる費目と変わらない費目で整理
新電力に切り替えようか迷っているものの、メリットだけでなく倒産や電気代の高騰といったデメリットも気になって足踏みしていませんか。結論から言うと、新電力への切り替えで変わるのは料金プランであり、再エネ賦課金や送配電の質のように変わらない費目もあります。この記事では新電力に変えて変わるものと変わらないものを費目ごとに整理し、倒産・撤退時の安全網や後悔しない選び方まで解説します。
経済産業省・資源エネルギー庁、帝国データバンクなど公的機関・調査会社の公表情報にあたって記事を書いています。この記事の再エネ賦課金単価に関する記述は経済産業省の公表資料で2026年9月19日に確認したものです。
新電力とは 電力自由化で生まれた小売電気事業者
新電力とは、2016年4月の電力小売全面自由化以降に電気の小売事業に新規参入した、大手電力会社以外の小売電気事業者のことです。電力の供給網そのものを新しく作るわけではなく、既存の送配電網を使って電気を販売する事業者を指します。ガス会社や通信会社など幅広い業種の企業が新電力として参入しており、2026年7月時点で小売電気事業者は約800者にのぼります。
電力自由化から生まれた3つの事業区分
電力システム改革により、電気事業は発電事業者・送配電事業者・小売電気事業者という3つの区分に分かれました。新電力はこのうち小売電気事業者にあたり、発電した電気を卸電力市場や自社の発電設備から調達して契約者に販売します。送配電を担うのは自由化後も地域の送配電事業者のみで、新電力が独自に電線を敷くわけではありません。
- 発電事業者 電気をつくる
- 送配電事業者 電気を届ける
- 小売電気事業者 電気を売る
大手電力会社との違い
大手電力会社(旧一般電気事業者)と新電力の違いは、主に発電設備の保有状況と料金プランの設計にあります。大手電力会社は自社の発電設備を多く持つのに対し、新電力の多くは発電設備を持たず、日本卸電力取引所(JEPX)から電力を調達しています。この調達方法の違いが、後述する市場連動型プランのリスクにもつながっています。
新電力を選んでも、家庭に届く電気そのものは大手電力会社と同じ送配電網を通ります。契約先を変えても電気の質は変わりません。
新電力に乗り換えるメリット
新電力に乗り換える一番のメリットは、自分の使用量や生活スタイルに合わせて料金プランを比較し、選べるようになることです。大手電力会社の標準メニュー1種類しか選べなかった自由化前と違い、新電力各社は時間帯別プランやオール電化向けプラン、ガスとのセット割引などを展開しており、契約を見直すだけで電気代を抑えられる可能性があります。
料金プランを比較して選べる
新電力各社は基本料金を抑えたプランや、夜間の使用量が多い世帯向けの時間帯別プランなど、多様な料金体系を用意しています。検針票で直近1年分の使用量と時間帯の傾向を確認したうえで複数社をシミュレーションすると、自分の使い方に合うプランを見つけやすくなります。
セット割やポイント還元などの付帯サービス
電気とガス、携帯電話回線などをまとめて契約すると割引になるセット割や、利用料金に応じたポイント還元を提供する新電力もあります。付帯サービスの魅力は大きいものの、セット割の対象を先に解約すると割引が外れる場合があるため、それぞれの契約条件を個別に確認しておく必要があります。
再生可能エネルギー由来のプランを選べる
再生可能エネルギー由来の電気を中心に供給するプランを選べる点も、自由化前にはなかった選択肢です。二酸化炭素の排出量が少ない電気を使いたいという価値観に合わせて契約先を選べますが、発電方法によって料金水準が変わることがあるため、環境価値と料金のバランスを確認する必要があります。
- 料金プランを比較して選べる
- セット割やポイント還元を受けられる場合がある
- 再生可能エネルギー由来の電気を選べる
- 生活スタイルに合った時間帯別プランを選べる
- 契約先の変更に工事や停電を伴わない
プラン変更のための工事や停電は発生しません。切り替え手続きはオンラインで完結する会社がほとんどです。
新電力に乗り換えるデメリット
選択肢が増えた一方で、新電力に乗り換えるデメリットは、比較検討の手間が増えることと、市場価格の高騰や事業者の経営状況によって想定外の負担が生じる可能性があることです。プランの仕組みを理解せずに契約すると、かえって電気代が高くなったり、契約期間中の解約で違約金が発生したりすることがあります。特に比較の手間と価格変動のリスクは、乗り換えをためらう理由として挙がりやすい点です。
比較検討に手間がかかる
小売電気事業者は約800者存在し、プランの組み合わせはさらに多くなります。安さだけを基準に選ぶと、自分の使用量では想定したほど安くならないことがあります。契約前に検針票の使用量を用意し、複数社のシミュレーションを比較する手間は避けられません。
市場連動型プランは市場価格高騰のリスクがある
発電設備を持たない新電力の多くは、JEPXの市場価格に連動して電気料金が変わる市場連動型プランを扱っています。2022年はコロナ禍からの経済再開による需給逼迫と、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う燃料調達の不安定化が重なり、市場価格が高騰しました。市場連動型プランを契約していた家庭や企業では、電気代が急激に跳ね上がる事態が起きています。
契約期間中の解約で違約金が発生することがある
新電力の中には、1年から2年程度の契約期間を設定し、期間内に解約すると数千円程度の解約金が発生する会社があります。エンタメ系の特典が付いたプランでは、残存月数に応じて解約金が変わる場合もあります。解約金を設定していない会社もあるため、契約前に条件を確認しておくことが欠かせません。
- プラン数が多く比較に手間がかかる
- 市場連動型プランは価格高騰時に電気代が急増する
- 契約期間中の解約で違約金が発生する場合がある
- 供給元が倒産・撤退するリスクがある
- セット割の対象を解約すると割引が外れることがある
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 基本料金 | 契約アンペア・契約容量ごとの金額 |
| 電力量料金単価 | 使用量の段階別単価 |
| 料金体系 | 市場連動型か固定単価型か |
| 解約金 | 金額と発生条件 |
| 契約期間 | 自動更新の有無 |
市場連動型プランは、卸電力市場の価格が高騰した月に電気代が跳ね上がることがあります。契約前に価格の上限の有無と、固定単価型との違いを確認してください。
新電力に変えて変わるもの・変わらないもの
新電力への切り替えを検討するときにまず押さえておきたいのは、基本料金や電力量料金のように会社ごとに設定が異なる費目と、再エネ賦課金や託送料金のように国や送配電事業者が全国一律で決める費目があるという違いです。この2つを混同すると、新電力にすれば全ての費目が安くなると誤解してしまいます。会社ごとの企業努力で下げられる余地が大きいのは基本料金と電力量料金で、再エネ賦課金と託送料金は契約先を変えても金額が動きません。
契約先によって変わる費目
電気料金のうち、基本料金、電力量料金(従量料金)、燃料費調整額の上限の有無、付帯サービスの内容は契約先の会社ごとに異なります。新電力に乗り換えて電気代を抑えられる可能性があるのは、主にこれらの費目です。プランを比較する際は、この4点に絞って確認すると判断しやすくなります。
契約先を変えても変わらない費目
再エネ賦課金の単価は経済産業大臣が毎年度全国一律で決定するもので、2026年度は1キロワット時あたり4.18円です。2025年度の3.98円から上昇し、初めて4円台になりました。この単価は新電力に変えても下がりません。送配電網の使用料である託送料金も、地域の送配電事業者が一律で定めるため、契約先による差はありません。
| 費目 | 新電力に変えると |
|---|---|
| 基本料金 | 変わる(会社ごとに設定) |
| 電力量料金 | 変わる(会社ごとに設定) |
| 燃料費調整額 | 上限の有無は会社ごとに変わる |
| 再エネ賦課金 | 変わらない(全国一律 2026年度4.18円/kWh) |
| 託送料金 | 変わらない(送配電事業者が設定) |
| 電気の質・停電対応 | 変わらない(送配電網は共通) |
- 再エネ賦課金は国が全国一律で決める
- 託送料金は送配電事業者が一律で定める
- 送配電網の管理は自由化後も地域の送配電事業者が担う
- 停電時の復旧対応は契約先によって変わらない
- 電気の周波数や電圧などの品質も変わらない
新電力にすれば再エネ賦課金が安くなるという説明を見かけたら誤りです。安くなるのは使用量を減らした場合の請求額であり、単価そのものではありません。
新電力が倒産・撤退したらどうなるか
契約していた新電力が倒産・撤退すると聞くと、電気が止まるのではと不安に思うかもしれませんが、電力の供給が完全に止まることはありません。帝国データバンクの調査によれば、新電力の撤退・倒産は近年増加傾向にあるものの、契約者には最終保障供給という国の制度によるセーフティネットが用意されています。この制度は電気事業法にもとづき、一般送配電事業者に供給義務が課される形で運用されています。
帝国データバンクの調査に見る撤退社数の推移
帝国データバンクが2024年3月に公表した調査によると、2021年4月に登録があった706社の新電力のうち、撤退または倒産・廃業に至った会社は累計119社(構成比16.9パーセント)にのぼりました。これは2022年3月時点の17社から2年で約7倍に増えた数字で、卸電力市場の価格高騰が経営を圧迫したことが背景にあります。
| 時点 | 状況 |
|---|---|
| 2021年4月 | 小売電気事業者706社が登録 |
| 2022年3月 | 撤退・倒産・廃業の累計17社 |
| 2024年3月 | 撤退・倒産・廃業の累計119社(構成比16.9パーセント、2年で7倍) |
契約先がなくなっても最終保障供給で電気は止まらない
契約していた新電力が撤退・倒産して無契約の状態になっても、一般送配電事業者が実施する最終保障供給という制度により電気の供給は続きます。料金水準は標準メニューより2割程度高く設定されているため、あくまで一時的な受け皿と位置付け、早めに別の電力会社への切り替えを検討することが大切です。
- 契約前に事業者の経営状況や設立年数を確認する
- 市場連動型プランか固定単価型プランかを把握しておく
- 撤退の通知が届いたら早めに次の契約先を検討する
- 最終保障供給は一時的な受け皿と考える
- 複数の電力会社の情報をまとめておくと切り替えがスムーズになる
最終保障供給を実施するのは、電気を送る送配電網を管理する一般送配電事業者です。新電力の倒産後も、この仕組みによって電気の供給自体は継続されます。
新電力が倒産しても電気が使えなくなることはありません。ただし最終保障供給は割高なので、案内が来たら早めに次の契約先を決めましょう。
新電力への切り替えで後悔しないための選び方
新電力への切り替えで後悔しないためには、安さのランキングではなく、自分の使用量とリスク許容度に合わせた基準で選ぶことが重要です。世帯人数や電気の使い方によって有利なプランは変わるため、一律のおすすめではなく、自分に当てはまる軸を確認しておく必要があります。使用量の多寡だけでなく、価格変動をどこまで許容できるかという軸も選択に関わります。
使用量とライフスタイルに合わせて選ぶ軸
電気使用量が少ない一人暮らしの世帯は、基本料金が0円のプランや少量帯の単価が低いプランが有利になりやすい傾向があります。一方、使用量が多い家族世帯は、多量帯の単価やガス・通信とのセット割を重視したほうが総額を抑えやすくなります。検針票で直近1年分の使用量を確認してから比較するのが基本です。
市場連動型プランを選ぶ前に確認すること
市場価格が高騰した際の電気代の上限があるかどうかは、契約前に必ず確認しておきたい点です。上限のない市場連動型プランは、電気代を抑えられる可能性がある一方で、価格が急騰した月には大きな負担につながります。リスクを避けたい場合は、料金が一定の固定単価型プランを選ぶという判断もあります。
| 世帯タイプ | 重視する軸 |
|---|---|
| 一人暮らし | 基本料金と少量帯の単価 |
| 家族世帯 | 多量帯の単価とセット割 |
| 価格変動を避けたい世帯 | 固定単価型プランと解約条件 |
- 直近1年分の検針票で使用量を確認する
- 基本料金と電力量料金の両方を比較する
- 市場連動型か固定単価型かを確認する
- 解約金の金額と発生条件を確認する
- 事業者の経営状況や設立年数を確認する
ランキング上位の会社が必ずしも自分にとって最安とは限りません。使用量に合わせたシミュレーションが欠かせません。
よくある質問
新電力への乗り換えについて、検索でよく調べられている疑問をまとめます。回答は2026年9月19日時点で確認した公的機関の公表情報にもとづく内容で、制度の見直しによって今後変わる可能性があります。料金・賦課金・倒産時の対応という3つの誤解しやすい論点にしぼって、判断に迷いやすい点を短くまとめ直しています。
新電力に変えると電気代は必ず安くなりますか
必ず安くなるとは限りません。新電力の料金プランは基本料金や電力量料金の設定が会社ごとに異なり、使用量や契約アンペアによっては現在契約している会社のままのほうが安いこともあります。契約前に検針票の使用量でシミュレーションし、燃料費調整額の上限の有無や解約金の条件もあわせて確認することが欠かせません。安さだけでなく、自分の使用量に合ったプランかどうかを基準に選ぶことが大切です。
新電力に変えると再エネ賦課金は安くなりますか
安くなりません。再エネ賦課金の単価は経済産業大臣が毎年度全国一律で決定するもので、2026年度は1キロワット時あたり4.18円です。契約する電力会社を新電力に変えても単価そのものは下がらない仕組みになっています。使用量を減らせば賦課金の請求額は使用量に比例して下がりますが、それは契約先を変えたことによる効果ではありません。
新電力が倒産したら電気は止まりますか
止まりません。契約していた新電力が倒産・撤退して無契約の状態になっても、一般送配電事業者が実施する最終保障供給という制度により電気の供給は継続されます。ただし料金水準は標準メニューより2割程度高く設定されているため、あくまで一時的な受け皿と考え、案内が届いたら早めに次の契約先を検討することをおすすめします。
新電力への切り替えに工事は必要ですか
基本的に不要です。新電力への切り替えは契約先の変更にあたり、既存の電力メーターやスマートメーターをそのまま使うため、多くの場合は電気工事や停電を伴いません。申し込みはオンラインで完結する会社が多く、切り替え作業は電力会社間で行われるため、契約者が立ち会う必要もありません。
まとめ
新電力とは、2016年の電力小売全面自由化以降に参入した大手電力会社以外の小売電気事業者のことで、料金プランを比較して選べる点や、セット割・再エネプランを選べる点がメリットです。一方で比較検討の手間や、市場連動型プランの価格高騰リスク、契約期間中の解約金には注意が必要です。契約前に解約条件と料金体系の種類(市場連動型か固定単価型か)を確認しておくと、こうした失敗を避けやすくなります。
再エネ賦課金や託送料金、送配電の質のように、新電力に変えても変わらない費目があることも押さえておきましょう。帝国データバンクの調査では新電力の撤退・倒産が2022年から2024年で7倍に増えていますが、最終保障供給という安全網があるため、契約先が無くなっても電気が使えなくなることはありません。自分の使用量とリスク許容度に合わせて、契約を定期的に見直す視点を持つことが大切です。
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